配線器具は「CO₂から作る」時代へ 日本を代表する電材メーカーとメタノール総合メーカーが共同開発

コンセントが炭素循環型社会の先駆けに?(写真はイメージです) Toru Kimura-shutterstock
<パナソニック エレクトリックスワークス社と三菱ガス化学が共同で開発した「環境配慮型ユリア樹脂」とは何か。誰の家にもある身近な「リサイクルできないもの」を持続可能にする挑戦>
普段の暮らしの中で私たちが毎日目にしている、コンセントなどの配線器具。誰にとっても身近なものだが、配線器具がどのような材料で作られているかを気にしたことがある人は少ないだろう。
これら配線器具に多く使われているのが「ユリア樹脂」という材料だ。
ユリア樹脂はショートや火災の要因となるトラッキングへの耐性が高く、火災安全性の高い材料としての長所を持つ。
一方で、一度割れてしまうと元に戻らない熱硬化性と呼ばれる性質を持つため、溶かして再成形できるPET素材のようにリサイクルができない。ユリア樹脂には、資源循環が難しいという課題があった。
たかが配線器具、とは言えないだろう。例えば、コンセントなどの総称である配線用差込接続器(一般用)は、日本国内だけで月に1200万個以上が製造されているのだ(日本配線システム工業会による2025年3月統計)。
配線器具の資源循環をどう実現するか。この課題に挑んだのが、パナソニックと三菱ガス化学だ。
パナソニックはコンセントやスイッチなど電気設備資材を祖業とし、日本やアジアで高いシェアを誇る。同社の電材事業を担うパナソニック エレクトリックワークス社(以下、パナソニックEW社)によると、その国内シェアは約8割と他を圧倒。現在2位の世界シェアも順調に進展し、トップをうかがえる位置に付けている。
一方、三菱ガス化学は、上流から下流までメタノールに関わる事業の全てを手掛ける「世界唯一のメタノール総合メーカー」だ。同社によると、生産能力は世界3位で、日本に輸入されるメタノールの約60%は同社が海外プラントで製造したものだという。
両社は4月、CO₂から製造したメタノールを原料とする「環境配慮型ユリア樹脂」を共同で開発し、記者発表を行った。